手紙に香りを添える文香を知っていますか? 古くから日本に伝わる、美しい香りの文化です。手紙をあまり書かないという人でも、暮らしのいろいろなシーンで取り入れることができますよ。その使い方を紹介します。

文香って?

「ふみこう」と読み、「文」は手紙のこと。平安時代から続く日本の文化で、手紙に小さな香り袋を添えます。
電話もメールも、SNSもない時代、男性から女性へのファーストアプローチは手紙でした。とはいえ愛する姫の手元に手紙が渡るには、女官や世話役の厳しいチェックをくぐり抜けなくてはいけません。男性たちはあの手この手で自分の趣味の良さや品格をアピールしようと工夫しました。そのひとつの方法が文香だったのです。
今のように自由な恋愛が認められていなかったころ、手紙にはストレートな気持ちを書くことができない事情もあったはずです。そんなときには文香がふたりの合言葉となり、文字にできない思いまで届けていたのでしょう。

手帳や名刺入れにも

時代が変わった現代でも、アロマを楽しむ感覚で文香を取り入れることができます。
毎日使う手帳や読みかけの本のしおりとして文香をはさんでおくと、ページを開くたびに良い香りが漂います。忙しい毎日のなかで好きな香りがふっと舞い上がると、ちょっと幸せな気持ちになれますね。
ビジネスにこそ文香を
本来の手紙に添える使い方は、今となってはむしろ新鮮な驚きを相手に与えます。手紙を日常的に書かない人は、名刺入れに文香を忍ばせておきましょう。名刺を受け取った相手にはあなたの印象が強く残るはずです。ビジネスシーンで名刺は自分の分身といわれます。自分を表すものとしてどんな香りを相手に届けたいか、じっくり選ぶのも楽しい時間になりますよ。
贈り物にそっと気持ちを添える
文香は小さい包みなので、日常のちょっとした贈り物に気軽に添えられます。プレゼントの包みを開けた瞬間にふわっと香りが出てくると、それだけで特別感が増します。
結婚式や出産祝いなどのご祝儀袋に入れるのにも最適です。お金の贈り物は形式的になりがちですが、物を贈ると相手に気を使わせてしまうこともあります。ご祝儀に文香をひとつ添えるだけで、祝福の気持ちをさりげなく届けることができます。

どんな香りを選ぶ?

日本古来の香りにはなじみがない人も多いのではないでしょうか。まずは親しみのある香りから取り入れてみましょう。最近ではローズやラベンダーなど洋風の香りの文香もたくさん売られています。ドライポプリが手に入ったら文香をハンドメイドしてみるのも良いでしょう。お気に入りの和紙で少量のポプリを包むだけです。香りのオリジナルブレンドをつくったり、包み紙と香りの組み合わせを変えてみたり、届けたい気持ちにより近い文香づくりを楽しみましょう。
和の心を香りに
白檀やヒノキ、緑茶など和を感じる香りは粋で落ち着いた印象を与えます。ハンドメイドをする場合、緑茶は茶葉を使うことができますが、ほかの和の素材はちょっと手に入りづらいですよね。そんな時に手軽に文香に加工できるのがお線香です。小さく折ったりすりつぶして利用できます。お線香を使う際は細かい粉が落ちないように、包みを二重にする気遣いをお忘れなく。
相手の好みや季節に合わせて
文香も贈り物のひとつです。プレゼントを選ぶように、相手の喜ぶ顔を思い浮かべて香りを選んでみてくださいね。相手の好みがわからなくて困ったときには、季節やシチュエーションに合った香りを選ぶと不快感を与えません。時候のあいさつをするように、春には梅や桜、夏は緑茶、秋にはキンモクセイ、そして冬は柚子などがぴったりです。

大切にしたい日本の美しい文化

文香は言葉ではなく香りに気持ちを乗せるという、なんとも日本人らしい、奥ゆかしい文化です。電話やメールでは決して送ることができない香り。上手に使えば言葉以上に思いを伝えられますよ。相手への本当の気持ちを、文香でそっと届けてみませんか?