「冬は汗をかかないから風呂は入らなくて大丈夫」「寒いから入浴はおっくう」と被介護者の方に入浴を断られたことはありませんか? 入浴しない日が1日だけでなく数日となると、介護する中でも臭いが気になってくるはずです。今回は、そんな悩みについて対策とポイントをご紹介します。

高齢者・被介護者が入浴を断る理由

一般的に入浴は、体の清潔を保つだけでなくリラックス効果や、爽快感が得られる好ましいものに感じますが、なぜ高齢者や被介護者は入浴を拒否することがあるのでしょうか。
 人との交流の減少によって入浴の目的が無くなりがち
人は、入浴することによって体を清潔にすることで身なりを整えたり、体臭を防いだりするものです。退職後も仕事や地域の活動などに積極的に参加している場合には、人と交流する中でのエチケットとして入浴する目的が明確です。しかし、退職して外に出ることが少なくなったり、体調不良で自宅にこもりがちになったりした場合、頻繁に入浴しなければならない理由が無くなり、おっくうに感じてしまいます。
 体調不良による体への負担
入浴は、お湯の温熱効果で体のめぐりをよくすることができる反面、何らかの持病を持つ人にとっては負担に感じやすいものです。また、高血圧や不整脈などの循環器系疾患を持つ人の場合では、特に血圧への影響を心配していることがあります。
 入浴介護への抵抗
入浴は裸になるため、他人に下着や体を見られることに抵抗を感じ、嫌がる場合があります。
 認知症によるもの
病気の進行の程度にもよりますが、認知症の患者さんの場合は「入浴はもう済ませた」と勘違いしていることがあります。ときに入浴の習慣や方法自体を忘れてしまったり、理解できなくなってしまったりする場合があります。
 けがや病気などによる入浴への恐怖感
入浴中に転倒したり、病気の症状を発症したり、浴槽で溺れかけた経験を持つ人は、そのときの恐怖感から入浴することが難しくなる場合があります。入浴を拒む理由が分からないときには、恐怖心の有無をたずねてみましょう。

気になる臭いの原因

年を重ねると老人臭がするという人もいますが、実際には数日交換しない下着や衣服の汚れや、体からの分泌物などいろいろな臭いが混ざって気になる臭いを作り出していることが多いものです。代謝が低下している高齢者であっても、毎日全身からいろいろな分泌物が出ていることを忘れないようにしましょう。特に肌に直接触れる下着は、汗や体からの分泌物を吸収しやすく、常に体温で温まっているため、雑菌が繁殖しやすい環境になっています。雑菌は、汗や垢(あか)などの成分から臭いの原因物質を作り出すのです。
ほかの原因としては、入浴した場合であっても高齢者ひとりでは、老化によって関節の動きが悪くなるために体の隅々まで洗うことが難しくなっている場合があります。そのため、入浴ごとに洗い残した汚れがたまって臭いの原因となってしまうことがあります。
また、長年の食習慣から体の分泌物の臭いが強まっていたり、内臓の老化によりアンモニア臭が強まってしまったりすることも考えられるでしょう。

どう対処すべき?

 入浴や清拭(せいしき)を断られないために
誰でも突然「毎日お風呂に入って欲しい」と言われると、不信感を持ったり、自尊心を傷つけられたと感じてしまったりするものです。そのようなことを避けるために、入浴や清拭を高齢者に勧めたいときには、「寒い季節になったので、風邪をひかないように体を温めましょう」「肌が乾燥しやすい季節なので、お肌のお手入れを手伝いますよ」などと高齢者を思いやる気持ちを伝えてみてください。毎日の入浴や清拭が難しい場合でも、高齢者の希望する間隔で同意が得られる場合には、それを尊重するようにしましょう。それでも、断られる場合にはきちんと入浴を拒む理由について話し合うか、専門家(ケアマネ、保健師、看護師など)に相談してみてください。
 臭い対策
臭い対策に有効なのは、体と下着や服の清潔を保つことです。入浴や清拭をしない場合でも、下着と衣服は毎日交換するようにしましょう。また、汚れに気付いたときにはこまめに交換することが大切です。
入浴や清拭を介助するときには、洗い残しや拭き残しがないように隅々まできれいにしてください。発汗しやすい皮膚の密着部位や、洗い忘れの多い耳や首元の後ろは特に気を付けましょう。

冬だからと思わずに正しいケアを

「冬だから、汗をかきにくい」「冬だから、入浴しなくても大丈夫」と思っても毎日の分泌物や、衣類の汚れにより臭いは発生します。入浴や清拭、衣類の交換といったケアを通常と同じようにすることが臭いの発生を抑えます。そのためには、被介護者への心遣いが大切です。お互い気持ちよく介護していくために、冬もしっかり臭い対策をしましょう。